Endoplasmic Reticulum Stress Compound Library

小胞体（Endoplasmic Reticulum：ER）は細胞小器官の一つとしてタンパク質のフォールディングや分泌、カルシウムホメオスタシス、脂質の合成における重要な役割を担うと同時に、糖鎖修飾やジスルフィド結合の形成など多くの翻訳後修飾が行われる反応場でもあります。小胞体でタンパク質は正しい立体構造へとフォールディングされ、各サブユニットが多量体構造を形成します。しかし、タンパク質がフォールディングの異常なタンパク質の蓄積、酸化還元制御の変化、カルシウム濃度調節の撹乱、グルコース飢餓、ウイルス感染などによりホメオスタシスが維持できなくなると、小胞体ストレス応答（unfolded Protein Response：UPR）や小胞体過負荷反応（Endoplasmic Reticulum Overloaded Response：EOR）といった小胞体ストレス（ERストレス）を惹起します。その結果として、小胞体分子シャペロンであるグルコース調節タンパク質（GRP78、GRP94など）が誘導されるとタンパク質の生成は減速し、タンパク質分解システムが駆動します。しかし、小胞体ストレスが過剰または長期にわたる場合、カスパーゼ12（Caspase-12）による小胞体ストレス誘導型アポトーシスを引き起こします。

ERストレスは正常な状態や病理学的状態において発生する他、がん、2型糖尿病、虚血、ウイルス感染、神経変性疾患など多くの疾患に関与することが報告されています。低酸素状態は小胞体ストレスを誘発するため、中心部が低酸素状態となりがちな固形腫瘍に関連があります。また、インスリン抵抗性も小胞体ストレスと関連しており、2型糖尿病のモデルマウスにおいてケミカルシャペロン療法がインスリン感受性を回復させることが報告されており、ERストレスを引き起こす薬剤を用いた化学療法が提案されています。

本製品はPERK、IRE1、ATF6、GRP78など、ERストレス伝達におけるターゲットに作用する193のERストレス関連化合物をからなるライブラリーです。ERストレスおよび関連疾患の研究にご活用ください。