HIF-1 Signaling Pathway Compound Library

細胞内シグナル伝達は細胞内の機能を個々に調節し、互いに連携させることで細胞としての活動を支えています。細胞が特定の環境刺激に対して適切に応答する能力は発達、組織修復、免疫、および正常な組織の恒常性に不可欠です。シグナル伝達のクロストークや細胞内の情報処理の異常はがん、自己免疫疾患、糖尿病などの疾患の原因となります。細胞内シグナル伝達のさらなる解明による疾患治療の進歩が期待されています。

低酸素誘導因子-1（hypoxia inducible factor-1：HIF-1）は低酸素応答における重要な調節因子として注目を集めています。HIF-1の遺伝子は進化の過程で高度に保存されており、コードされるHIF-1βとHIF-1α、HIF-2α、またはHIF-3αのいずれかのαサブユニットはHIF-1としてヘテロ二量体を形成します。これらのサブユニットは塩基性ヘリックス・ループ・ヘリックス転写因子のスーパーファミリーにいずれも属しているものの、転写因子としての活性は主にHIF-1αサブユニットの細胞内での発現量によって調節されています。ヘテロ二量体のHIF-1は転写の際、標的遺伝子の低酸素応答配列（hypoxia-responsive elements：HRE）と呼ばれる共通配列5'-(A/G) CGTG-3’に結合することで転写因子として機能します。現在までに、HIF-1の直接的な標的遺伝子は100以上が特定されており、これらの遺伝子はがんの転移、血管新生、エネルギー代謝、細胞分化、アポトーシスなどに機能的に関与していることが示されています。

集中的な研究の結果、HIF-1シグナル伝達経路は血管系における主要な調節因子であることが解明され、血管疾患やがんの重要な治療標的となることが示唆されました。さらに免疫機能、軟骨形成、創傷治癒など多様な現象における役割が明らかになってきたことで、HIF機能の薬理学的な増強は多くの疾患治療において有効であると考えられています。一方、脳卒中、心筋梗塞、肺高血圧症だけでなく多くのがんにおいてもHIFの増加が見られることから、HIF機能の阻害も多岐にわたる応用が考えられています。

本製品はHIF-1に関連する1352種類の低分子化合物からなるライブラリーです。細胞による低酸素感知機構の研究ニーズに対応すべく、PI3K-AKT、MAPK、ユビキチン化シグナルなどの伝達経路およびHIF、HIFプロリルヒドロキシラーゼ、E1/E2/E3酵素、PI3K、MAPK、プロテアソームなどの因子を標的とする化合物を収集しました。